20101226

本の記録 / 幸福を見つめるコピー

ことばの持つ力というものを考えるようになったのは、司馬遼太郎の本を読み始めた大学4年生のころ。

一語一語のもつ力、行間・字間にある間合い。選ばれることば、漢字、フォント。
そこに作者の思想、思考などが読み取れるのだ。

ポスターやCMなどといった時間的空間的にも制約された条件下で、はっとさせられる作品を創りだす「コピーライター」という職業に畏敬の念を抱く。

2009年に発売されたが、今年読んで一番印象に残っている本。



幸福を見つめるコピー  岩崎俊一  東急エージェンシー

P73 でも僕は、そうやって出会ったふたりを「出会う運命にあった」などと美化するつもりはない。出会うことはまったくの偶然である、問題は出会ったあとの関係のつくりかただ。新しい人との出会い、その都度、その人その人の人間関係を、きちんとていねいに育てる人を見ていると、心から尊敬してしまう。

P175 トンボ鉛筆

消しゴムを使う人を見ると、


あ、この人は一生けんめい闘っているんだな、


と、なんだかちょっと応援したくなります。


自分の思いを、正しくわかりやすく伝えるには


どう書けばいいのか。


それと真正面から向き合い、苦しみ、迷いながら、


でも何とか前へ進もうともがいている。


消す、という行為には、人間の、


そんなひたむきな想いが、


こもっている気がしてなりません。


189 ソニー


ただ美しいもの。ただきらびやかなもの。見た目に大胆で、


ただ人を驚かせるもの。ソニーにとって、それはデザインではありません。


その商品がカメラであればなおさらです。


機能こそが、デザイン。デザインの素晴らしさとは、いかなる時も、


機能の中にしか存在しない。ソニーは、そう考えるのです。


197 協和発酵キリン


私たちの前には、いつもかけがえのないいのちがあります。


祝福されて生まれ、いつくしみの中で育ち、


夢に胸をふくらませ、しあわせになることを願って生きるいのち。


まず、私たちは、この地上でもっとも大切なもののために働いていることを心に刻みこもう。


そのために、私たち製薬会社にできることは無限にある。


自分たちを信じよう。自分たちの力を、


自分たちが積み上げてきたものを信じよう。


私たちは、決して大きな会社ではない。


でも私たちには、どんな大きな会社にも


負けないものがある。どこにもない歴史があり、


そしてどこにも負けない優秀な人材がいる。


困難をおそれない勇気を持とう。


常識をつきやぶる情熱を持とう。革新とは、ただの成長ではない。


飛躍という、翼を持った成長なのだ。


その翼は、現状に満足する者には永久に


与えられないことを知ろう。つくるものは、薬だけではない。


私たちは、あらゆる人の笑顔をつくろう。


人がどれほど生きることを望んでいるか。


家族がどれほどその人を愛しているか。


医療に従事する人がどれほど


ひとつひとつのいのちを救いたいと願っているか。


人間に与えられた感受性をサビつかせることなく、


世界一、いのちにやさしい会社になろう。世界を救うのは


強さだけではない。人間のやさしさが必要なのだ。


最高のチームになろう。どんな優秀な人間も


一人はあまりにも非力で、まちがうこともある。


力を合わせた人間というものが、どれほどすばらしい

成果を残せるか。それを世界に示したいと思う。


スピードをあげよう。いまこうしている間も、


病とけんめいに闘う人がいる。私たちは、その戦いが


どんなひたむきであるかを知っている。


急ごう。走ってはいけないが、止まることは許されない。


そして、どんな時も誠実であり続けよう。そのことは、


心から誓おう。私たちは薬をつくっている。人のいのちと一緒に


歩いているのだ。仕事は、人をしあわせにできる。


いつも、私たちはそのことを忘れないでいよう。


私たちは、さまざまな場所で生まれ、さまざまな時間を経て、


さながら奇蹟のように、この仕事、この会社、


この仲間に出会った。そのことを心からよろこぼう。


そして、いまここにいる自分に感謝し、その使命に心血を注ぎ、


かけがえのないいのちのために働くことを、誇りとしよう。


人間の情熱を、人間のために使うしあわせ。


私たちは、ひとりひとりが協和発酵キリンです。

306 「そう。まさに発見だ。発明じゃない。自分が生まれる以前から誰にも気づかれずにそこに存在している定理を、掘り起こすんだ。神の手帳にだけ記されている心理を、一行ずつ、書き写してゆくようなものだ(後略)」すなわち、「コピーはつくるものではない、見つけるものだ」




 

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